英語の「聞き流し」はやり方次第では逆効果に!

リスニング

英語の聞き流しは本当に効果があるのか?

 「聞き流し」とは、英語をBGMのように流しておくだけで英語力が身に付くという学習法のこと。聞き流せばいいのですから、楽にできそうですが、はたして本当に効果があるのでしょうか?

幼児ならある程度の効果が期待できる

 私は以前、子供向けの英語教育教材の販売促進の仕事をしていたことがあり、そのセット教材の中にも聞き流しのCDがありました。その教材をご購入いただいたお客様の中には、我が子を「日本にいながらバイリンガルに育てたい!」という教育熱心な親御さんが多く、0歳児から英語のCDを毎日聞かせているという方もめずらしくありませんでした。

 購入後のアンケートの中には、日本語もまだ十分に話せないのに、「突然、英語の単語をしゃべりました!」と喜んで報告される方もおり、幼児にはある程度の効果があるのだと思いました。また、最初からネイティブの発音に触れますので、カタコトでしゃべる英単語も、日本人なまりがほとんどないようです。そういった意味で「聞き流し」は、日本語もまだ覚束ない、早い時期の子どもにとっては、一定の効果があるのではないかと思います。

大人の学習者に「聞き流し」は通用する?

 では、大人の学習者の場合はどうでしょうか? 結論から先に申し上げますと、ただ「聞き流す」だけでは、英語は全く頭に入ってきません! これは私の経験からもはっきり言えます。

脳科学から見た、幼児と大人の英語学習の違い

 幼児には効果があって大人にはなぜ効果がないのか? 実感としてはわかっていても、長い間、その理由が私にはわかりませんでした。ところが、ある日、脳科学者の茂木健一郎氏の『脳のコンディションの整え方』(ぱる出版)を読んでいるときに、まさに「これだ!」と思える記述に出会ったのです!

 茂木氏によれば、若い頃から英語を聞き育った人と、大人になって英語を学び始めた人では、言語を処理する脳の領域に違いがあるそうです。

 脳の仕組みの言語野から見ると、バイリンガルの環境で育った人は母語が日本語でも、英語を話す環境にいたら、日本語も英語も同じ脳の領域で処理されていることがわかっています。つまり、オーバーラップしているのです。

引用:『脳のコンディションの整え方』茂木健一郎

 では、中学校から英語を習い始めた場合はどうかというと…

 今、日本では小学校から英語が学べますが、自分の例でいえば中学校から英語を学びました。その場合、日本語と英語を処理する脳の領域は別々なのです。

引用:『脳のコンディションの整え方』茂木健一郎

 つまり、

 ・子どもの頃から英語を聞いて育った人 →→→ 日本語と英語は同じ脳の領域で処理される

 ・中学校から英語を学んだ人 →→→ 英語と日本語は違う脳の領域で処理される

という違いがあるというのです!

英語は日本語と違う脳の領域を使う

  つまり、幼児から英語の「聞き流し」をしていれば、英語も日本語も同じ脳の領域を使いますから、ふだん日本語を聞いている延長線上で、英語を聞くことができます

 一方、大人の学習者は英語を聞くときに日本語とは違う脳の領域を使いますから、単に日本語を聞き流すのと同じような感じで英語を聞いていても、脳の領域が活性化されず、英語が全然頭に入ってこないのだな、と理解しました。

 例えば、テレビのニュースをつけっぱなしにして、スマホをいじっていても、「地震です!」といったアナウンスが流れると、すぐに気づきますよね? これは私たちが日本語ネイティブなので、特に意識を向けていなくてもすぐに反応できるわけです。

 ところが、英語は「外国語」であり、日本語を処理する脳の領域とは別の領域で処理されます。

したがって、「英語を処理する脳の領域」をオンにしておかない限り、脳が英語に反応しないのです。それが、「ただ聞き流すだけでは、英語が全く頭に入ってこない」理由なのだと思います。

「聞き流し」ではなく、「意識を向けて聞く」練習をする

 ですので、英語のニュースやCDをかけるときは、「聞き流す」のではなく、「意識を向けて聞く」ことがポイントです。洗い物をしたり、掃除をしたり、同時進行で何かをやっていてもかまわないのですが、意識だけは、きっちり英語の音声に傾けることが大切です。

 一見、小さなことに思えますが、実はこの“意識の傾け方の違い”が大きな差を生むのです。

 この「英語に意識を傾ける」という訓練を続けていると、英語が聞こえてきたときに、脳にスイッチが入るようになります。感覚としては、英語を聞くときに働く脳の領域が、働き始めるという感じでしょうか。

 これは「脳の訓練」のようなもので、英語が聞こえてきたときにスイッチが入るようになると、例えば街で通りがかりの外国人が英語で話していることが、突然、耳に入ってくるようになります。これは実際に私が経験した感覚ですので、みなさんもきっと実感していただけると思います。

Sook
Sook

別のことをしながら、リスニングをする「ながら聞き」は私もよくやっています。でも、「聞き流す」のではなく、「意識を向けて」聞くことがポイントです!


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